ただQueenについては自分でもさんざんバンドでコピーしたこともあり、曲の解釈としてどうなのさという感じの聴き比べになってしまった。
本来オリジナルアルバム同士で比較するべきなんだけど、クイーンのグレイテスト・ヒッツに限っては英国で一番売れたロックアルバムだし、手っ取り早く見渡せるのでまあいいかと。
聴き比べ対象マスター
A. 1987初期マスター
B. 1991リマスター
C. 2011リマスター
AはGreatest Hits初回版CD。手持ちのCDは日本プレスだけどEU向けなので「Teo Torriatte」のボーナスなし。この曲順だとなくていいけど、出来れば日本盤CDはLPと同じ曲順にしてほしかった。Under Pressureとか入ってたね。
Bはオリジナルアルバムから抜粋。買った覚えは全くないんだけど、ファーストからHot Spaceまで、同じバージョンで揃っていた。時期的にフレディ追悼でまとめ買いしたのかも。
Cの2011リマスターはボブ・ラドウィックという大変高名なお方が手掛けたらしく、最初から名リマスターと決まってるかのようだ。でも経歴見るとキンクスのほとんどのアルバムを手掛けたという時点で個人的にはNGだし、制作当時65歳くらいなので決め付けは良くないかと。
Bohemian Rhapsody
まずは2011リマスターから。普通に良い。特に違和感もないし、Queenサウンドだ。次に初期マスター。こちらも悪くない。前半は淡々と流れる。ロジャーってハイライトの付け方が上手くなくて、単に軽く叩いちゃうからリズムが揺れるねとか思いつつ最後まで聴いて違いがわかった。
この曲のハイライトは言うまでもなくコーラスパート最後の「ふぉーみーー」からブライアンのソロに雪崩れ込むところの「来た来た来たー」という高揚感なのだが、2011はそれが希薄なのだ。おそらく音圧上げたために上のマージンがなくなってしまったんだろうと想像。
Another One Bites The Dust
再び2011リマスターから。前の曲からEQ設定変えるの忘れたんだろうかと思うほどベースの音が変。あとこれは昔からなんだけど、冒頭部のギターとベースのチューニングが微妙に合ってない気がして気持ち悪い。初期マスターも多少マシだけど、同じ様な印象。方向的に明らかに違うのが1991リマスターで、ベースとサイドギターが一体化してチューニングが気にならなくなった。
明確な決め手がないまま、違和感のなさで1991リマスターを選択。
Killer Queen
2011はメリハリの効いた、明るく小気味良い音。ただピアノがエレピみたいに聴こえるのは気のせいか。
初期マスターは聞き慣れた音。ピアノ、ベース、ギター、どれを取っても粒立ちがいい気がする。ピアノは打楽器なんだよね。
ノイズは多いけど楽器の音がする初期マスターが一番好み。
Fat Bottomed Girls
この曲苦手なので正直どっちでもいいんだけど、多少ねちっこさが緩和されてる気がする2011マスターに一票。
Bicycle Race
ブレイク部でどれだけ馬鹿やれるか勝負みたいな曲なので、2011リマスターくらい分離がいい方が効果的かも。初期マスターのビキビキベースも捨てがたいけど。
You're My Best Friend
ドラムが主役みたいなミックス。まあ下から上がってくるフィルが効果的ではある。
初期マスターの方がベースが自然に鳴ってる気がする。
Don't Stop Me Now
先に初期マスター聴いたら何の不満もない。2011はベース弄ったのか、太くした分アタックがなくなってしまった。ジョン・ディーコンのベースって元から十分デカイから、変にブーストしないほうがいいと思う。
Save Me
この曲はフレディの歌に没入するための曲であって、バックは極端に言えばカラオケ状態で良い。2011はみんなが前に出過ぎる。
Crazy Little Thing Called Love
似非ロカビリー的なノリを出しているのは右チャンネルのアコギ(フレディ?)だったりするのだが、2011だと前に出すぎてリズム隊として機能していない。
Somebody To Love
音場を横長の長方形に例えると、ドラムとベースが下辺中央、ピアノが右辺、枠内がフレディで上辺がコーラス。これが2011になるとベースが上に、ピアノが左に侵食し枠内に。そのため出番の少ないブライアンが強引に枠内に侵入してくるカタルシスが薄れている気がする。ただ全部の楽器が分離しているので、聴き込んだ人ほど「音が良くなった」と感じると思う。
Now I'm Here
初期マスターはクイーン特有の、モノラルみたいな全員中央モコモコサウンド。2011は楽器の定位をはっきりさせ、ステレオ感を増している。代償としてバスドラムが布団サウンドで犠牲になっているが、中域で聴かせてしまう。重心が腰あたりにある感じ。1991マスターはもう少し重心が低くてバスドラムは布団ではないがパフパフ。初期マスターはもっと重心が低くて、バスドラムの音もまとも。
クイーンらしさという点では初期マスターなんだろうけど、ドラムを犠牲にして解像度を上げるという発想が斬新な2011に一票。
Good Old-Fashoned Lover Boy
これも初期マスターと2011リマスターではモノラルとステレオくらいの違いがある。意外と中間の1991リマスターが良い。
Play The Game
単調な曲に変化を付けるためベースがかなり動くんだけど、その音が結構違う。自分がドラムだったとして叩きやすいのはという観点からするとやはり初期マスター。2011リマスターだとメロ楽器が1つ増えた感じ。
Flash
2011は全員半歩前にという感じ。縦にスペースがないので「ドーン」が手前に来れず横に広がってる感じがする。
シングルとアルバムの違いはあるけど、あえて言えば1991の方がバスドラの二次振動が聴こえて楽しい。
Seven Seas Of Rhye
初期マスターはもはやモノラル状態だが決してモコモコではなく、楽器音の芯もしっかりしている。2011リマスターはステレオ感を出そうとしたら却ってモコモコしてしまった。
We Will Rock You
足踏みと手拍子の多重録音だけで構成されたリズム音は、オーバーダブによる劣化も計算に入れて立体的に聴こえるようミックスされているはず。2011リマスターは平面的機械的金属的で、サンプリング音源を聴かされてるみたい。
We Are The Champions
この曲は演奏すると滅茶苦茶楽しいんだけど、プレイする側のダイナミクス表現としては1991マスターかな。2011は一番のサビですでにmaxに達していて、後半にハイライトが持ってこれない平坦な演奏。初期マスターは何故かブライアンが一人で頑張っちゃってバックのテンションが付いてこない。
総評
後半になるほど初期マスターの評価が高くなるが、これだけコテコテの曲を2011リマスターで聴き続けるとさすがに疲れる。やはりオリジナルアルバムで聴き比べるべきだけど、残念ながら2011リマスターで買い揃えようとまではならなかった。
どれか一枚くらいは聴いてみたいけど、その前に初期マスター集めかな。
(2019年発売の24bitハイレゾCD。手を取りあってのボートラ入り18曲)
2017/03/09
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#Queen#デジタルリマスター